「ドカベン」読み終えました
ドカベンプロ野球編の連載終了をきっかけに、週末ごとに5-10冊ずつぐらいのペースで、レンタルして読み進めていた「ドカベン」全48巻を、先日、ようやく読み終えました。
子供の頃、アニメや、本屋での立ち読みで、一応、知ってはいたんですが、如何せん、アニメは飛び飛びで視聴、漫画の方も、本屋にあった分しか読んでいなかったり、「大甲子園」とごちゃまぜに読んでいたりで、かなり記憶がいいかげんだったので、今回、きちんと読み直して、自分の中での「ドカベン」のイメージが覆されたり、知らなくて驚いたところなどを中心に紹介してみようと思います。
今回改めて読んで、一番印象が変わったのが主人公の山田太郎。
それまでは、タイトルこそ「ドカベン」ですが、なんとなく岩鬼や殿馬の個性に食われて、地味な存在という印象でした。
しかし、最初からストーリーをきちんと追っていくと、山田太郎がいかに大きな存在であり、この漫画の全てが彼を中心に、動いていて、山田太郎という存在にたくさんの登場人物が引き寄せられることによって、大きな物語を生み出していたのだということがわかりました。
その圧倒的な実力と、素晴らしい人格、困難に負けない不屈の闘志など、もうどう考えても主人公は「ドカベン」以外ありえない。
デブで足が遅く、美形でもない、性格は、面白みがなくクソ真面目、しかも頭脳明晰で、野球の実力も最初から折り紙つき。
と、普通に考えると、少年漫画の主人公としては、あまり有利に働かない要素をたくさんもっているように思えるのですが、実際には、彼の魅力でストーリーがぐいぐい引っ張られていく。
本当にすごいやつだ。
登場人物に貧困家庭育ちが多い
これは、連載されていた時代も大きいのかな、と思うのですが、とにかく家庭環境や経済的な面で、恵まれていない登場人物が多い。
主人公の山田太郎からして、両親を事故でなくし、畳屋の祖父と妹と3人で暮らしているし、岩鬼も当初はお金持ちのお坊ちゃんだったのが、途中から父の会社が倒産するし、里中までも、病気の母と二人暮らしで、物語の最後にはそれが理由で高校を中退することになる(その後、どうなるのかはともかく)。
柔道編で登場した賀間は、貧しさのために、妹を病気で亡くしているし、雲竜も家が貧しく、彼を十分に食べさせることができないために、幼くして相撲部屋に預けられている。
坂田三吉も、大阪のスラムのようなところ出身だし、とにかく登場人物の貧しいエピソード、両親のどちらか(あるいは両方)がいないエピソードに事欠かない、というか、多すぎる。
昔は今よりずっと「貧困」が普通にあったんだろうなと、日本の戦後社会の庶民の生活を期せずして感じてしまいました。
柔道編がとてもおもしろい
ドカベンが最初は柔道漫画だった、というのは有名な話だと思うのですが、これが最初の数話、とかいうレベルではなく、5~6巻ぐらいまでずっと柔道をやっているのには驚かされました。
もう、山田太郎はこのまま野球をすることはないのではないだろうか、っていうぐらい続く。
しかも、これが、野球編への助走、みたいなおまけ的なものじゃなくて、格闘技漫画として純粋におもしろいんです。
それこそ、梶原一騎原作の漫画にも負けないぐらい。
あまりにもおもしろかったので、このまま山田太郎が野球に復帰せずに柔道日本一を目指す平行世界の話も読んでみたいと思わされるほどでした。
今回通読して、自分の中で評価が大幅に上がったのが、山田太郎とこの坂田三吉。
それまでは、「通天閣打法」を出したいがためのネタキャラぐらいにしか思っていなかったのですが、実は投手としても一流だったんですね。
ご存知の通り大阪といえば神奈川に負けず劣らず、甲子園予選の超激戦区。
そこで、毎回大阪代表として甲子園に出場しているっていうだけでも十分すごいのに、明訓が敗れた唯一の大会で、優勝したのが、なんとこの坂田三吉の通天閣高校。
見た目もわりと適当な感じだったので勘違いしていたのですが、まさかこんな強キャラだったとは。
予定調和的な展開がすごく少ない
野球漫画って、試合の最大の山場で主人公キャラと相手のエースの対決、みたいなのがよくあるじゃないですか。
ドカベンでももちろん、そういう場面もあるにはあるんですが、他の漫画と比べて圧倒的に少ないんですよね。
微笑三太郎や、それよりもっと地味な選手が相手チームのエースを打ち崩して、勝利するとかいう、なんとももやもやした勝利や、次の打席までまわしてしまうと、相手チームの強打者が待ち構えている、っていう場面で、その前の選手でアウトをとって、山場を迎える前にゲームセットみたいな試合が普通にあるw
実際、野球の試合ってそういうものなんですけれど、野球漫画では普通、そうではない。
それを普通にやってしまえる。
だからこそ、次の展開が読めなくて、読んでいてドキドキできるんですよね。
すごいぞ「ドカベン」。
そんなこんなで、「ドカベン」を今回改めて読み直してみて、新しい発見が多く、思った以上に新鮮な気持ちで楽しめました。
このまま「大甲子園」と言いたいところですが、ひたすら野球をやり続ける漫画を48巻まで読み続けて、疲れたというのが正直あるので、いったんここでドカベン読書は打ち切ります。
オレたちの「ドカベン」はこれからだ!