前回の記事ではてなスター(☆)をつけてくださった方、ありがとうございます。
はてなブログにおける「はてなスター」がどういう仕組みなのか、まだよくわかっていないのですが、とにかくありがとうございます。いただけるものはなんでもうれしいです。
「ビブリア古書堂の事件手帖」は、さすが人気作だけあって、前回の記事はこのブログを始めてから一番アクセス数も「イイね」ボタンの反応もよかったです。なので、今度は原作の小説の方の紹介を。といってもまだ一巻しか読んでいないのですが。
三上 延「ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち」
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
- 作者: 三上延
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/03/25
- メディア: 文庫
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鎌倉にある古びた古書店「ビブリオ古書堂」の女店主、栞子(しおりこ)が、身の回りにおこる様々な古書に関する事件の謎を解いていく、ミステリ仕立ての連作短編集。
今のところ4巻まで出ているみたいで、本書は第1巻にあたる。ドラマ版の初期の部分のエピソードが中心。
主人公の五浦大輔は本を読むと気分が悪くなる特異体質のため、本を読むことに対して憧れはあったものの今までほとんど読んだことがなかったのだが、ひょんなことからビブリオ古書堂で働くことになり、そこでおこる様々な事件を通して栞子の本に関する深く広い知識と、それを活かした驚異的な推理力を目のあたりにする、というのがだいたいの話の流れ。
「日常の謎」系のミステリで、ホームズ役が栞子で、主人公の大輔がワトスン役というわけだ。
この作品のポイント
で、この作品のポイントは二つあって、一つは舞台がちょっとめずらしい古書の世界の話(「本」の世界の話ではなくて「古書」なのがポイント)ということ。
これは今までありそうで意外に少なかった(ないことはないが)。
そしてもう一つは、この物語の真の主役である古書店主の栞子は、黒髪に長髪の美人で、ふだんは極めて内向的な性格だが、本のことになると別人のように積極的になる知的な女性である、というベタベタ過ぎて恥ずかしくなるぐらいわかりやすい読書好きにとっての理想の女性として描かれているところだ(ドラマ化で栞子役に剛力彩芽をキャスティングして非難轟々だったのは、つまりはそういうことなのである)。
しかもこの絵に描いたような理想的な女性と主人公のさえない男が、物語がすすむにつれてお互いに惹かれ合っていくという、おとぎ話のような設定。
この本好きにとってのツボ二点をしっかりおさえてあるのだから、想定される読者層に、ウケないはずがない。
甘ったるい話だが、それがいい
非常にあざとい小説といっていい。そのうえ彼女が「巨乳」の持ち主だという描写まであるのだから、何をか言わんや。いくらなんでもやりすぎだと言われても仕方がない。
そんな美人が古本屋で店長なんかしてるはずがないだろう、ましてやなんでそんなに都合よく、主人公とうまくいくんだ、と文句の一つも言いたくもなるが、もちろん作者もそういうことには充分自覚的で、それに対する照れ隠しか、或いはエクスキューズかと邪推してしまうような一節がある。
それは第二話の「小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』の中で、登場人物の一人である志田に『落穂拾ひ』という作品に対してこう言わせている場面だ。
(以下引用)
「人付き合いが苦手で世渡り下手な貧乏人が、不満も持たねえで生きていく、なんてただの願望だわな。まして、そいつの前に純真無垢な若い娘が現れて優しくしてくれる、なんてあるわけねえじゃねえか」
(中略)
「まあでも、そういうことが分かってて作者もあの話を書いたんだろうぜ。それは読めば分かる……あれは甘ったるい話を書く奴に感情移入する話なんだ」
(引用終わり)
自分は勝手にこれを作者の心の叫びだと理解した。
「この作品だってそうだ。いいんだよ、小説の中でぐらい甘い夢をみさせてくれよ」と。
だから読者も野暮なツッコミはせずに、思う存分この「甘い話」に身を浸して没入するのがこの作品の正しい楽しみ方なのである。
で、作者の狙い通りかどうかはわからないが、結果的にこの作品は人気が出て、その後、漫画化、ドラマ化と絶好調なのは御存知の通り。
この後、この甘い話がどういう結末を迎えるのか。それを見届けるために、作者にのせられるがままに続きも読んでいこうと思う。
つまりはそういうことだ。