高野秀行「アヘン王国潜入記」 還暦週刊新潮

 久しぶり。

 別に最近、キヨハラくんが捕まったから、というわけでもないのですが、 

 今日読み終わった本は、アヘン関係。

 

 

アヘン王国潜入記

 ソマリア関係の本がプチヒットのおかげで、最近少しメジャーになりつつある高野秀行のかなり昔の作品です。

 

 

 著者が、1995年に地理的にはミャンマービルマ)に位置しているアヘンの産地、ワ州(ただし、住人は自分たちがビルマ人だという自覚はない)に滞在し、現地人とともにアヘンの原料であるケシを種まきから収穫まで一通り体験し、最後に自身がアヘン中毒になってしまうぐらいに現地に馴染んでしまうという、異境潜入記。

 もう20年以上前の話なので、今とは状況は違うのだろうけれど、アフリカや南米の奥地まで行かずとも、こんな身近なところに、誰も知らない秘境が存在している事自体、すごい。

 アヘンを吸うと、どんなふうに中毒になっていくのか、ワ州の人々の風俗習慣、ケシの育て方など、役に立たない知識や情報が盛りだくさんで、その面白さは折り紙つき。

 この本で少し触れられているけれど、ミャンマービルマ)っていうのは、アジアのユーゴスラビアといっても過言ではないほど多民族が集まった複雑な国で、世間の一般的なイメージにあるような軍事政権(悪者)VSアウン・サン・スー・チーの民主派(正義)みたいな単純な図式ではないらしい。

 少数民族から見れば両派のどちらも、少数民族を不当に差別し搾取する多数派民族ビルマ人の集団という意味では大差ないので、もし仮にアウン・サン・スー・チーを中心に民主化が進めばそれで全てがうまくいくかというと、そういうわけにもいかず、むしろそれまで抑えつけられていた矛盾が一度に吹き出して余計大変なことになる可能性が高いとか。

 まあ、それはともかく、舞台となるワ州は完全に外界と遮断されているので、まるで主人公が異世界に迷い込んだSFかファンタジーみたいな味わいのある、たいそう楽しい旅行記でした。

 その後、著者は再びミャンマーへ行くことになるのだが、それはまた別のお話。

 

ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

 

  こちらもとってもおもしろいです。

 こちらを読むと、今のミャンマービルマ)というのは、戦中の日本とかなり縁のある国だったというのがわかります。

 

還暦週刊新潮 

 最近、センテンススプリングさんの影に隠れて存在感がない週刊誌のもう一方の雄、週刊新潮が最近出したこれ、超おもしろいよ。

 久しぶりに週刊誌なんか買っちゃったよ。

 

 

 創刊60周年を記念して「創刊号の復刻」+「歴代記事の傑作選」を収録して、しかも当時の時代背景や、その記事にでていた人たちが、その後どうなったかとかの解説もついているの。

  傑作選を一部紹介すると、 

 

 「力道山の死と生命保険 日本を驚かせた王者の訃報」(1963年12月30日号)

 「「江川」がいなけりゃ野球が出来ネエのかよ「巨人」さん」(1978年11月30日号)

 「もう一人の「宇野首相との十年」を語る「愛人」の人柄(1989年6月29日号)

 「門外不出「池田大作」狂的演説ビデオはこれだ」(1993年7月15日号)

 「暴露された「鳩山由紀夫」と「室蘭の愛人」十年の葛藤」(1996年11月7日号)

 

 どう?もう見出し見ただけでワクワクするでしょ?

 石原裕次郎山口淑子李香蘭)やヒッチコックのグラビア、創刊号の連載小説の執筆陣が谷崎潤一郎五味康祐大佛次郎ですよ(小説もちゃんと収録)。

 それから、50年以上前の力道山の記事を読んでみて驚いたんですが、今読んでも文章に全然違和感を感じないんですよ。

 慣れ親しんだオヤジ向け週刊誌文体。だから、読んでいて昔の事件だとは思えないぐらい、臨場感があります。

 たんなる錯覚かもしれませんが、これを読んでいるとなんとなく、当時の時代の空気がわかったような気さえしてしまいましたよ。

 こんな盛り沢山な内容で500円もしないお値打価格。雑誌なので本屋やコンビニにいつまで置いてあるかわかりませんから、この見出しに惹かれた人は、なくなる前に急いで買ったほうがいいですよ。

 つまりはそういうことだ。