私の中のニコラス・ケイジブームは一週間ほどであっさり終了し、今、空前の源氏物語ブームとなっております。
2024年の大河の主演が紫式部ということなので、戦国、幕末、現代以外の大河なら見ても良いかなと思い、視聴決定(そういう理由で、来年の徳川家康はパス)。
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時代が平安、主演が紫式部と、地雷臭しかしませんが、良い意味で予想を裏切ってくれることを期待しておきます。
で、今から予習をしておこうといろいろ漁っているところです。
映画「源氏物語(1966)」
これはきつかった。
なんだこの説明くさいセリフの数々、白塗りで、言動から行動からなにからなにまでキモい光源氏は。
話自体は、比較的オーソドックスに原作をなぞっているのですが(玉鬘十帖や宇治十帖はなし)、原作を知らないとたぶん、意味がわからないと思います(そんな人がわざわざこれを見ないかもしれませんが)。
平安時代の貴族社会と現代では、あまりにも価値観が違うので、作品の方で相当うまく演出してあげないと、光源氏がストーカーのレイプ魔にしか見えなくて、とてもじゃないけれど、感情移入できないのですが、この映画はまさにその失敗例の最たるものかと。
映画「源氏物語 千年の謎」
全然期待しないで見たら、意外にそこそこいけました。
紫式部パートと源氏物語パートを交互にやって、だんだんその境目が曖昧になっていくという、ありがちっちゃあ、ありがちなパターン。
源氏物語パートでは、あの長い原作を無理に全部やろうとせず、六条御息所の話をメインに、若紫の登場前に話が終わってしまうという割り切り方は好感がもてます。
源氏物語と言えば六条御息所なんだよ!という向きにはご満足いただけるのではないでしょうか。田中麗奈がやっているので、かわいいのはいいのですが、かわいすぎて年増感が全然なくて、六条御息所っぽく見えないのは難。
安倍晴明と六条御息所の亡霊との対決が見られるだけで、値打ちありです。
映画「千年の恋 ひかる源氏物語」
これ、昔見たことあったんですよね。
その時の感想が「ダラダラ長くてつまらない、明石の君の水中出産と無理やりぶっこんでくる松田聖子のミュージカルがひどすぎて笑える」ぐらいしか記憶になかったのですが、今、見るとかなりおもしろいです。
ゲテモノ好きやクソ映画ファンなら、見て損はないかと。
とにかくキャストが豪華なんです。
大河ドラマ並かそれ以上ってぐらい。
渡辺謙(藤原道長)と竹中直人(明石の入道)と山本太郎(惟光)が一つの映画で見られるんですよ!豪華!
それでなくても長い原作で尺が足りないのに、オリジナルシーンを無理やりぶっこんでいたのは松田聖子だけではなかった。絵師として片岡鶴太郎もなぜか無理やりぶっこんで絵を描かせています(もちろん、原作にそんなシーンなし)。
ツッコミどころが多すぎな本作ですが、ストーリーは概ね網羅していて、結構律儀にやっています。紫式部が主役で、源氏物語の世界と交互にやって、最後に2つの世界が一つになって、という陳腐なパターンはこの映画でも踏襲しています。
きっと大河ドラマもそんな感じになるんだろうなあ。
総じて、源氏物語の映像化にはろくなものがありませんので、映画で源氏物語を学ぼうというのはおすすめできません。
本当は、大河ドラマを「紫式部」ではなくて、「源氏物語」でやってほしかったんだけどなあ。
漫画「源氏物語 マンガ日本の古典」
このシリーズ、マンガとして面白いかと言われれば、微妙の一言ですが、源氏物語をマンガで理解するという目的でしたら、作者の脚色も多い「あさきゆめみし」よりも、文字による脚注も多く、原作を正確に理解できて良いかもしれません。ただし、宇治十帖はなし。
新書「図説 あらすじと地図で面白いほどわかる! 源氏物語 (青春新書インテリジェンス)」
これはおすすめ。
地図や図説、あらすじがわかりやすくコンパクトにまとまっていて、下手にマンガや映画を見るより、わかりやすいです。
新書「源氏物語を読み解く100問 (生活人新書)」
問題と解説形式で、源氏物語に関することをいろんな角度から知ることができます。
受験参考書のような形式で、細切れ時間にちょっとずつ読み進める、みたいなこともしやすいです。
問題形式だと、あるテーマに関する、ポイントがどこか、というのがわかりやすいのも良かったです。
「痛快!寂聴源氏塾」
翻訳もしている、瀬戸内寂聴による源氏物語の解説書。
良くも悪くも、解釈に筆者の主観が強く出ているので、面白くて、わかりやすい。文章も簡明なので、あらすじや時代背景を一通り知りたければ、これが一番良いかな。
そして、源氏物語と言えば、日本では大和和紀「あさきゆめみし」なのですが、こちらは現在、再読中。
昔読んだときは「女の人、似たような顔の人多すぎ!」とか思っていましたが、そもそも原作からして、登場人物のほとんどが、濃い血縁関係にあるんだから、顔が多かれ少なかれ似通っても仕方ないよな、と納得しましたw
私も多くの日本人と同様、「あさきゆめみし」で源氏物語を知ったクチなのですが、20年以上ぶりに、参考書籍などである程度、源氏物語の理解を深めた上で読んで、改めてこの作品のおもしろさとすごさを感じました。
例えば、「三国志演義」なんかだと、話の筋そのものが面白いから、誰がどう漫画化しても、映像化しても、よほど原作から乖離しない限り、基本、面白いんですよ。
つまらない三国志マンガなんて、思いつかないでしょ?
でも、「源氏物語」の場合、面白さの源泉が、現代と違う当時の時代背景、習慣を踏まえた上での、各キャラクターの細やかな内面描写とそれによる行動だったりするので、よっぽどうまくやらないと、感覚が違いすぎて、光源氏がなかなか魅力的に見えてこない。
今回挙げた、3本の映画も全部、うまくいっているとは言い難い。
「あさきゆめみし」がすごいのは、平安時代の貴族社会に少女漫画のフィルターを通して描くことで、そこらへんの齟齬を解決しているところだと思います。
あとは、単純に大和和紀が、ストーリーテラーとしてうますぎ。
ここまで来たら、あとは翻訳かなというところなのですが、ちょっとそこまでいくかどうかは、迷っています。
なにしろ長いからな。