気が付けば、11月もあとわずか。
早いね。こんばんは。
中国ドラマ「水滸伝」を見始めた。
前々から興味はあったのですが、あまりの長さに恐れをなして、手を出しかねていた中国ドラマ「水滸伝」。
覚悟を決めて U-Next で見始めました。
時代劇は、使われる中国語が難しく、日本語字幕なしでの視聴は厳しいので、こちらで視聴。
全86話(ちなみに大河ドラマ「麒麟が来る」がちょうど、1話あたりの時間が同じぐらいで、全44話)。
困ったことに、中国のドラマはこのぐらいの長さが普通です。
これがあるから中国ドラマはほとんど見ていないのですが、中国人は、いったいどうやって時間を捻出しているのかと、不思議になります。
さすが本場中国のものだけあって、クオリティーは高く(特撮がしょぼいのはご愛嬌。一話に出てくる虎のCGの酷さに、初っ端から不穏な空気を感じてしまいました。ついでに音楽もイマイチ。種類も少なく、使い方も微妙でちょっと残念な感じですが、そこは気にしない)、基本的に原作に忠実です。
終盤の招安以後は、原作を端折って、方臘との戦いに焦点をおいているっぽいので、100回本のドラマ化に近いかな。
原作は、外国の、しかも古い時代が舞台の、古い作品なので、現在と社会常識や、倫理観などと乖離していて、違和感を感じる部分がそこかしこにあります。
ドラマではある程度、現代風にアレンジして、納得できるような理由付けをしてくれたりはしてくれているのですが、それでも現代のエンタメの感覚からすると、生理的にちと厳しいと感じる点も少なからずあります。
特に物語に通底する男尊女卑の概念が、いくら昔の話とはいえ、あまりにもひどすぎて、正直、ドン引きです。
例えば、一応ストーリー上は悪役ということになっている、閻婆惜や潘金蓮(どっちもすごく綺麗!)など、キャラクターが、現代ドラマ的に描かれていることもあり、悪女どころか、可哀想な被害者にすら見えてしまいます。
どちらかというと宋江や武松の方がクソです。これは間違いなく。
私が「金瓶梅」が好きだから、余計贔屓目に見てしまうからかもしれませんが、このドラマの潘金蓮は、なかなかキャラが立っていて良いです。
自分の意志と無関係に周りの悪意と誤解によって否応なく悪女としてのふるまいと立ち回りを強いられ、最後に武松に殺されるのですが、死の直前、彼に対して、自分は淫売だと開き直るシーンは圧巻。
これを見ていると、そりゃ「金瓶梅」のような、潘金蓮は武松に殺されないルートで生き生きとした彼女の同人誌を書こうと思った人の気持もわかります。
そんな感じで、原作に忠実だったり、忠実であるがゆえに、いまいち感情移入できなかったり、オリジナル要素をうまく入れたり、失敗していたり様々で、各キャラをどう解釈するか非常に楽しめます。
でもだいたいにおいて、このドラマの俳優さんや、キャラ解釈は、良い感じです。
林冲はもうこれ、人気投票一位だろっていうぐらい、超かっこいいし、魯智深は最高に痛快で人情味もある好感、楊志は一癖あって、過去の出来事を根に持って、簡単に梁山泊に加わろうとはしないし、李逵は時にイライラさせられる脳筋バカ、みたいな基本はばっちり抑えています。
呼延灼将軍の圧倒的な強キャラ感とか、秦明の猪突猛進感とかファンの期待を裏切りません。
二線級キャラの描写もなかなかで、矮脚虎の王英は、本当にチビでスケベそうなおっさんだし、重要でない割に出番の多い、打虎将の李忠も大して強くないながら、桃花山の頭目に収まる程度の格がある人物としての、存在感と雰囲気がうまく出せています。
小李広の花栄(梁山泊のホークアイ枠)が、ビジャレアルの久保建英君似なのには、ちょっとコケました。そういえば、赤髪鬼の劉唐は山口智充似でした。
ただ一点、どうしても残念なところがあって、この作品に必要不可欠な存在であるはずの「妖術」が、この世界では存在していないんですよね。
水滸伝といえば妖術でしょうに。
一応、公孫勝が道士として、羅真人の元に修行に行く描写などはあるのですが、高廉との戦いは、妖術合戦ではなく、高廉の駆使する八卦の陣を公孫勝が打ち破る、という戦術対決になっています。
そこは、水滸伝の根幹に関わるところだと思っていたので、変なリアル志向にはがっかりです。そのせいで、公孫勝は存在感のわりに、いまいち活躍に派手さがありません。
他にもドラマならではの解釈として、このドラマでは、梁山泊の初代頭領、晁蓋が、招安(国に投降し、帰順すること)には消極的な考えを持っています。
この解釈はなかなか斬新で良かったですね。それに対して、宋江、呉用は、最初から招安推進派だったという。つまり、頭目の交代で、梁山泊の方針やその後の運命も変わったという可能性があったわけです。
この招安の扱いというのが、この作品においてなかなか微妙で。
水滸伝後半のメインイベントなんですが、展開としては、言ってしまえば、それまでの敵に、こき使われて、ただただ無駄死にさせられるだけなので、爽快感がなく、素直に受け入れがたい内容なのです(その部分を削除した70回本が後に作られ、それが広く支持されていたのもそれ故だし、北方謙三の完全二次創作の「水滸伝」では、招安そのものがなく、梁山泊は最後まで国家に対する叛乱の姿勢を崩していない)。
だから、もし晁蓋がそのまま生きていたら、その後の展開も全く違ったのではないか、みたいなIfを想像する余地ができる、この解釈は面白いと思いました。
こんなふうに、原作の解釈について楽しめるのも、ドラマオリジナル作品や、完成された原作を持つ作品ならではですね。
で、現在、ようやく晁蓋が死んだ所(第58話)まで見終わりました。
これから盧俊義を仲間にするエピソードが始まり、ようやく終盤の入り口が見えてきた感じです。
余談ですが、このドラマ、ものすごく長いのに、出てくる人物の男比率が異様に高くて、むさ苦しさ半端ないです(副題も「All Men Are Brothers」だしな)。価値観も超男尊女卑の100%男の世界ですので、そこらへんで、ずっと見ていると、だんだんきつくなってきました。
数少ない女性キャラも、だいぶ前に一丈青の扈三娘が出てきたのを最後に、女性キャラメインのエピソードにはずいぶんご無沙汰なので、そろそろ出てくるであろう李師師の登場に期待しております(キャラ的には水滸伝トップクラスの美女なので、ハードルはかなり上がっております)。
他にも今月は、SWICHを買ったり、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展へ行ったり、11月は、いろいろあったのですが、長くなったので、今日はこのへんで。
こうやって、一度書き出すと、時間がかかっちゃうから、余計更新しにくくなるんだよなあ。もっと細切れで更新する習慣をつけないと。
来月の「新解釈 三国志」も楽しみにしています。
「こんなの三国志じゃない!でたらめだ!」って日中で大炎上するぐらいの「新解釈」を期待しています。
劉備一行が「はかた号」に乗って戦場へ向かうぐらいの「新解釈」でも構わないので、期待しています。
12/11(金)公開 特別映像「大体3分でわかる新解釈・三國志」
間違っても、「曹操って普通の作品ではたいてい悪役だけど(実際はそんなこと全然ないと思うが)、この映画の曹操は、かっこいいです!」みたいなヌルくて新しくもなんともない「新解釈」でがっかりさせられることだけは勘弁してください。