現代のベートーヴェン、佐村河内守(さむらごうち・まもる)の作曲が、実は別人だった詐欺事件(メディアは早くこの一連のスキャンダルの事件名を、確定して欲しい)が、メディアでもネットでも注目を集めている。
この事件、様々な角度から、自分独自の視点でいろいろ語れるから、そりゃあみんな飛びつくよなあ。
本当にこの事件はおもしろい、というか興味深すぎる。
というわけで、自分ものっかってみます。
なんか話がすごく松本清張の小説っぽいよなあ。
ゴーストライターの新垣さんとか、松本清張の小説なら、事実を暴露する直前に、手紙で海辺に呼び出されて殺されてもおかしくないし、西村京太郎の小説なら誘拐事件を装って殺されてもおかしくないもんなあ。
で、佐村河内が真犯人かと思いきや、彼は黒幕に操られたたんなる手下に過ぎず、黒幕はNHKスペシャルのプロデューサー、みたいな話。
日本のマスコミと音楽業界の闇が明らかに!(社会派だけに)。
新垣さん逃げてー!
で、こうなると、この曲を絶賛していた人は赤っ恥なわけで、そういうのがどこかにあるかなあと思って探したら、HMVの佐村河内守の紹介ページで、慶応大学教授で音楽評論家の「きょみつとし」さんの評論を見つけた。
これが今読むと味わい深くておもしろい。
もっとも悲劇的な、苦渋に満ちた交響曲を書いた人は誰か? 耳が聞こえず孤独に悩んだベートーヴェンだろうか。ペシミストだったチャイコフスキーか。それとも、妻のことで悩んだマーラーか。死の不安に怯えていたショスタコーヴィチか。あるいは・・・。
もちろん世界中に存在するすべての交響曲を聴いたわけではないが、知っている範囲でよいというなら、私の答は決まっている。佐村河内守(さむらごうち まもる)の交響曲第1番である。
確かに悲劇的で苦渋に満ちた交響曲だw
しかもこの長い評論、よくよく読んでみると、作者の経歴や、作曲に対する姿勢や苦労についてばかり触れていて、曲そのものは全く褒めていないw
ああ、この人はきっと、この交響曲に対して、音楽的に騙されていたわけではなかったんだなw
仕事でどうしても提灯記事を書く必要があって、だからといって、自分の名前で良いと思わない曲を「良い」と書くのもはばかられるから、曲の本質とは関係のない周辺情報で一生懸命文字を埋めて、なんとなく絶賛しているように見えるように苦労して書いたんだろうなあ、とかいろいろ妄想がはかどった。
「弱者」が「命がけ」で「広島」への「平和の祈りを込めて」書いた曲を、純粋に音楽的な部分だけをとりだして聴いて、その曲がたとえイマイチだと思ったからといって、批判することが出来る人なんてそうそういない、っていうか普通できないもんなあ。
なんか久しぶりに松本清張を読みたくなってきたよ。
つまりはそういうことだ。