最近読んだ本。
嫉妬と自己愛 - 「負の感情」を制した者だけが生き残れる (中公新書ラクレ)
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/02/08
- メディア: 新書
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「嫉妬」は、これまでにも多く語られていると思いますが、「自己愛」は、最近クローズアップされつつある概念であり、そういえば、これまであんまり考えたことなかったかな~という感じで、興味深く読みました。
ちなみに本書で著者は、現在の35歳前後を境に、それより上の世代は「嫉妬」、下の世代は「自己愛」の感情の強い人が目立っている、と述べています。
社会が右肩上がりのうちは、向上心の歪んだ形として、自分があるべき場所に他人が立っていることに対して「嫉妬」することもあったが、停滞して、上へ行く見込みがないと感じる人が増えると、感情の行き先が内なる「自己愛」に向かう、っていう分析は、あり得るかな、と思いましたね。
本書では、そういった「嫉妬」と「自己愛」を語る上でのサンプルに文学作品や映画をとりあげて、その登場人物の造形から、これらの感情や、社会状況なんかを考察している、という、ちょっとおもしろい試みをしています。
せっかくですので、どういう作品をとりあげているのかを、メモ代わりにここに紹介しておきますね。
「自己愛」について。
女性作家の描く、女性の自己愛の醜さとか、絶対おもしろそうですよね。
機会があれば読んでみたいと思いました。
本文庫収録の「いなか、の、すとーかー」が紹介されていました。
ストーカーなんて、自己愛の最たるものですもんね。
こちらは「嫉妬」の事例。
どちらかというと、嫉妬のほうが、イメージしやすいかな。
有名な文学作品ですね。こちらも「嫉妬」の感情が身を滅ぼす事例だそうです。なんか夏目漱石のここらへんの前後期三部作は、どれも似たようなものが多いような気が…。
専業主婦とバリキャリの女性二人が出てくる、「自己愛」の強いこまったさんの小説みたいです。
これもおもしろそう。
唯一、これは私も読んだことのある作品です。
佐藤優はこの作品を「嫉妬」も「自己愛」も皆無の人間を描いている稀有な作品とし、時代が「嫉妬」や「自己愛」から、さらに一歩先に進んだのを感じているみたいです。
余談ですが、芥川賞受賞作といえば、だいたいつまらない作品なのが普通ですが(どうしてつまらない作品ばかり選ばれるのかといえば、選考委員の顔ぶれをみれば、だいたい想像がつくと思います)、これは例外的に面白いです。
つづいて紹介された映画がこの2作です。
どうしてこの2作なのかといえば、監督の井口 奈己と佐藤優の対談が本書に収録されているからなんですよね。
偶然なのか意図的なのか知りませんが、女性作家による作品が圧倒的に多いですね。
ちなみに「嫉妬」といえば、日本の成人男性の65%ぐらいは、こちらの作品から「男の嫉妬」に関する教訓を学んでいるものだと勝手に想像しています。
嫉妬は我が身を滅ぼすことにもなりかねないので、ほどほどにしましょう。
ノーモア、落鳳坡!