清朝末期が熱い(自分の中で) 陳 舜臣「中国近代の群像」 (朝日選書 172)

浅田次郎原作のドラマ「蒼穹の昴」を見て、その後、原作を読んだり、西太后関連の本を読んだりと、自分の中で空前の清朝末期ブームがおこっていて、その流れで先日、陳 舜臣「中国近代の群像」 (朝日選書 172) を読んだ。

中国の清末から中華民国成立あたりまで(年代的には日本の明治初期あたり)の人物伝からこの時代を読み解こうという試みの本。

日本史における幕末と同様、中国史においてもこの清末から中華民国を経て日中戦争中国共産党へという時代は激動の時代だ。

中国の伝統的な価値観と西洋の新しい価値観のせめぎあい、列強諸国の進出、いち早く近代化を達成した隣国日本との関係などなど、幕末の日本の比じゃないほど様々な要素が複雑に絡み合っているので、中国の近代史は実はかなり面白いということに気づいた。

日本の場合、明治維新が誰の目にも明らかな成功だったので、そこから逆算することによって、正解がどこにあって、どの出来事が重要で、誰が正しかったのかなど、ある程度評価しやすいのだが、中国の場合、そのまま混乱しつづけて、うまくいったとはとても言いがたい状態が長く続いたので、なにがよくてなにが悪かったのかというのも(共産党の公式見解とは裏腹に)今でもはっきりとしたことは言いにくく、それだけに、自分なりにいろいろ考える余地がたくさんあっていいのだ。

乱世なので、優秀な人、濃い人がたくさん出てくるのも面白いポイント。

本書はそれほど古い本でもないのだが、Amazonでも書誌情報がほとんどないので、目次をメモしておく(後ろのカッコ書きは私のつけたし)。

すごくメジャーな人もいれば、そこまで歴史上名を残したわけでもない人もいる。

例えば、張作霖なんて日本人なら関東軍に爆殺されたぐらいのイメージしかない人も多いのではなかろうか。この人も実はなかなかにたいした大盗賊の親玉で、生きていたらその後の歴史が変わっていたかもしれないぐらいの大物だったのだ。

目次

それからの林則徐

皇帝になれなかった男・曽国藩

原型的はずれ者・容閎(ようこう)

頼りすぎた男・康有為

講和屋一代・李鴻章

混沌たる憂国者・譚嗣同

追い越されるジャーナリスト・梁啓超

二流軍閥の誕生と没落・段祺瑞

乗っ取り屋一代・張作霖

揺れうごいた熱狂家・戴天仇(たいてんきゅう、戴伝賢、字は季陶、ペンネームが天仇)

没落の時代に殉じた男・王国維

 

以上。なかなかこれらの人物単体で紹介してくれる本もめずらしいし、陳舜臣なのでとてもわかりやすくて良かったです。

ただ、いきなりこれを読んでもちょっとわかりにくいかもしれないので、清朝末期を知る入り口は「蒼穹の昴」がオススメ。

蒼穹の昴 DVD-BOX 1

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蒼穹の昴全4巻セット (講談社文庫)

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珍妃の井戸 (講談社文庫)

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西太后―大清帝国最後の光芒 (中公新書)

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つまりはそういうことだ。