映画「ナイル殺人事件」 テレビドラマ「シリーズ横溝正史短編集III」

 これまで生きてきてつくづくわかったのは、世の中、「起こりうることは、どんなにありえなさそうでも、起こる」のだということですね。

 物理法則に反してでもいない限り、絶対起こらないなんていうことは、ありえないんだなと。

 それでも、核兵器が実戦で使われるという未来だけは、起こらないよう祈っております。

ナイル殺人事件

 コロナの影響で公開が伸びに伸びた「ナイル殺人事件」です。

 待ってました。


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 原作は読んでいるので、興味は、原作がどこまで忠実に再現されているのかと、その上で、どんなふうに個性が出ているのかでした。

 どちらも及第点といったところでしょうか。

 

 ラーメンが食べたいと思ってラーメン屋へ入ったら、ラーメンをちゃんと出してくれて、味も期待したとおりのものだったといったところ。

 原作ありの小説の映像化は、こういうのでいいんだよ。

 

 舞台はエジプト旅行中の豪華客船の中という映像化向きな場所で、期待に違わず、ピラミッド、スフィンクスといったゴージャスな映像も存分に楽しめます。

 

 基本的には十分満足で、これが完全オリジナルなら全然文句はなかったのですが、やっぱり原作があると、そこからの減点法のような形で不満はどうしても出てくるもので、そこも少し。

 

 ジャクリーンが、これ以上にないぐらいすごくジャクリーンで良かった。

 なので欲を言えば、最期がちょっとあっさりしすぎなので、もっと大見得を切って欲しかった。

 尺の都合があるとはいえ、もっとリネット、サイモン、ジャクリーンの三人に焦点をあてて欲しかったなとも思いました。

 リネットは、ちょっと「金持ちの嫌な女」感が足りない、サイモンは「ダメな男」感がもう少し欲しかった。

 どうしてもあの長い原作を2時間にまとめるには、いろいろ端折らないといけないのは仕方ないので、「犯人はいったいだれか」みたいなサスペンスよりも、この三人の性格や関係性の描写にもっと比重を置いてくれたほうが、わたしにとってはより好みでした。

 

 こう言ったらあれですが、犯人とか、最初からバレバレの作品ですので、「ナイル殺人事件」は、ジャクリーンを楽しむ話だと私は認識しているので。

 

 ケネス・ブラナーのポワロは、特に好きというほどでもないのですが、まあ、このぐらいなら、良いのではないでしょうか。

 ホームズもそうですが、映像化しようと思うと、画面映えを考えて、どうしてもアクションができて激情家の、武闘派っぽいキャラになりがちなのは、仕方ないと勝手に納得しています。

テレビドラマ「シリーズ横溝正史短編集III」

 なかなか良くできていて面白かったです。

 NHKオンデマンドで3月12日まで見られますので、興味があったらぜひ。

 誰が演じても「金田一耕助」というイメージが揺るがないというのは、なかなかすごい。演者によってまるで別人になってしまうぐらいイメージが固定されていない「明智小五郎」とは対照的。「名探偵」というキャラクターの強度が、年を経て、ずいぶん差がついてしまった感があります。

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 あと、こういうツッコミは無粋だとは承知しているのですが、いくらなんでも、頭蓋骨に穴が空くようなやり方で刺殺しておいて、脳出血で処理されるように誤魔化すとか、強引すぎるにもほどがありますな。

映画「大怪獣のあとしまつ」

 インコの動きを見ていると、動きの端々に恐竜っぽさを感じて、鳥類の祖先が恐竜だったという最新の学説に納得してしまう、今日このごろです。

映画「大怪獣のあとしまつ」

 なにかと話題の「大怪獣のあとしまつ」。

 初日から「令和のデビルマン」「クソ映画」など、絶賛の嵐だったので、これは見逃せない!と、喜び勇んで映画館に駆けつけました。


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 感想です。

 普通に面白かったです。

 なんだよ、クソ映画が見られると思ってワクワクしていたのに。

 評判は評判として、ちゃんと自分の目で見て判断しないといけないな、と改めて思いましたね。

 なんかネット上で「この映画は叩いても良い映画」という合意ができて、みんなで寄ってたかって大喜利のようになっている空気の犠牲になっている部分があるように感じます。

 

 たまたま、今、同じ監督の昔のドラマ「時効警察」を見ていたので、この監督が怪獣の出てくる映画を作れば、こうなるよな、と思いました。

 「時効警察」の世界観を、怪獣映画、というより「シン・ゴジラ」のフォーマットでふざけ倒す映画です、と聞いて、「おもしろそう」だと思う人なら、この映画も楽しめるはず。

 

 好き嫌いの分かれそうな作風ではあるので、これを見て不愉快に感じたり、つまらなく感じる人が多いのはまあ理解できますが、これだけちゃんと作られているのに、ギャグがくだらない、面白いと感じられないから、クソ映画っていうのは違うよなあ。

 

 似たような方向性の映画で、最近だと福田雄一監督の「新解釈・三国志」がありましたが、こちらが、長い原作を、一本の長編としてまとめるのを最初から放棄して、短編ショートコントのツギハギで安易に作っているのと比べれば、「大怪獣のあとしまつ」の方が、よほど志が高くて、ちゃんとした映画だと思います(「新解釈・三国志」もこれはこれで、私は好きですが)。

 

 少なくとも私は2時間近いこの映画、最後まで退屈することなく見られました。それだけでも十分、一定の水準はクリアしています。

 

 もちろん、面白くないと感じる人がいるのも、ノリが嫌い、合わないと感じる人がいるのも十分理解できますし、不満点や、アラをあげようと思えば、いくらでもあげられる映画ではあります。

 手放しで最高に面白い!と言うには程遠いです。

 

 私はギャグ部分よりも、むしろメインのストーリーが気になりました。

 終盤、雨音正彦(濱田岳)が偽のダムの設計書を渡して、ダム破壊作戦を失敗させたり、主人公がミサイルを打つのを、邪魔するために自分の方でも別にミサイルを打つんですが、そんなことをする彼の行動原理がよくわからない。

 ただただ、物語の都合上、主人公を窮地に陥れる展開を強引に作ろうとしているだけのようにしか見えませんでした。

 単に雨音正彦が主人公を嫌って妨害した、というのは、彼の立場やその時の状況を考えると、無理がありすぎです。

 メインストーリーは、凝ったものでなくても良いから、そういう不自然さを感じさせてほしくなかった。

 それがなにより残念でした。

 

 ギャグは、三木聡の作風を知っていれば、ああそうだよな、としか言いようがなくて、面白いとか、つまらないとかじゃあないような気がしますが、全部が全部とは到底言えなくても、時おり笑えたので、それで十分かなと。

 政治風刺的な意味でいうと「シン・ゴジラ」みたいなやたらかっこいい政治家達より、戯劇化されてはいますが、こっちの方が、日本という国のグダグダさのリアリティを感じられて良かったですね。

 

 幸い、興行収入は好調なようです。

 

myjitsu.jp

 

 この記事も「クソ映画だが、ジャニーズが主演というだけで、ジャニーズファンがおしかけ、大人気!」みたいないやらしい印象操作をしていますが、ネットの評判も、あんまり鵜呑みにすると良くないですね。

 「デビルマンと同レベル」とか、まともに映画を見ている人の感想とは思えませんし。

 

 気になる方はぜひ、自分の目で確かめることをおすすめします。

「ククルス・ドアンの島」を知らなかった男

 先日、ブログにて、去年、佐藤賢一の「カペー朝」を読みましたと書きました。

 しかし、読了後、読書記録を調べたところ、実は、この本、2009年に読んでいたことがわかりました。

 嘘だろ。

 恐ろしいことに、本を読んでいる最中も、読んだ後も、過去に読んでいたということに全く気づきませんでした。

 記憶に定着していなさすぎ。

 

 さらにさらに、昨日、この本を読み終え、

 

 ハプスブルク家神聖ローマ帝国について、概要がわかったので、そのうち、いつかこの本も読もうと思っていたんですよ。

 何年も前から「いつか読みたい本」リストに入っていた「神聖ローマ帝国」の新書。

 

 ところがですよ。

 

junichiro241.hatenablog.com

 

 読んでた!5年ほど前に、読んでた!

 しかも、したり顔で、

おかげで、ようやくドイツ周辺の中世史が、少しわかってきました。

 

 とか、書いているよ!今、内容どころか、本を読んだことすら、全然覚えていないのに!!!

 

 自分で自分が恐ろしくなってきましたよ。

 ミステリで、読んだ作品の犯人を覚えていないことはしょっちゅうなので、もはやなんとも思わないのですが、「読んだ」という事実さえ、忘れていたなんて。

 

 痴呆症に待ったなしです。

 というか、もうボケ始めているのでしょうか。

 

 と、ここまでが前置きです。

 

ククルス・ドアンの島」を知らなかった男

 

 最近、ガンダムの新作映画の発表がありましたよね。

g-doan.net

 なんとファーストガンダムの15話をスピンオフして、映画化。

 これは熱い!

 

 ん?

 ククルス・ドアンって誰?

 全くピンときません。

 一応、ファーストガンダムは、中国にいたときに、海賊版DVD(VCDにコピーされたものをDVDに再コピーしたものだったかも)でテレビアニメ版も履修しているはずなのにです。

 しかし、今は配信というすばらしいものがあります。

 さっそくU-Nextで15話を視聴してみました。

 

 全然、思い出せません。

 キャラクターを見ても、見覚えがない。

 まるで初めて見たかのように、次の展開がわかりません。

 ザクがまるでエヴァンゲリオンのように軽やかに動くなあ、とか、最初に捕虜になった連邦軍の兵士に対する酷い仕打ちは、みんなスルーしちゃうの?とか思いながら、普通に新エピソードとして、最後まで楽しんでしまいました。

 当時、ガンダムをつまらないと思って流し見していたわけではありません。

 むしろ、映画版でハマって、テレビアニメ版も一周だけとはいえ、夢中になって見ていたはずです。

 なのに、こんなに覚えていない、思い出せないことに、さすがに愕然としてしまいました。

 

 しかし、です。

 後ほど、ネットで「15話は海外版では欠番になっている場合がある」という情報を見つけました(ネットって本当にすごい)。

 そうだったんです。

 当時の中国の海賊版DVDはたいてい複数言語の字幕に対応していましたから、きっと自分が見たのも海外版だったに違いありません(そうに決まっています!)。

 見ていないんだから、記憶に残っていないのも道理です。

 

 というわけで、「ククルス・ドアンの島」の映画化のおかげで、自分が気づかずに見ていなかったガンダムのエピソードを、令和の時代に、補完することができました。

 めでたしめでたし。

 実は当時、ちゃんと見ていて、私が忘れているだけ、という可能性は考えないことにします。

 

 「ククルス・ドアンの島」の映画、楽しみですね。

 ザクの華麗な肉弾戦に期待。

 

 P.S. シャリア・ブルは覚えています。