今月に入って、立て続けに「美女と野獣」の映画を3本見ました。
そういうと、さぞかしこの話が好きなのだろうと思われるかも知れませんが、まったく逆で、すごく嫌いで、こんなくだらない話はないよなあと思っています。
おとぎ話に真面目に突っ込むのもあれですが、こち亀の有名なシンデレラのエピソードがそうだったように、
この話も主人公のベルが美人でないとなりたたない話です。
しかも、「シンデレラ」ならまだ、「本当は能力(美貌)があるにも関わらず、不幸な境遇のために理不尽な目にあっていたのを、魔法使いのアシストで、正当な待遇を受けることができた」という話なので、(好き嫌いは別にして)少なくとも筋は通っていると思うのです。
しかし、「美女と野獣」の場合、そもそものメインテーマが「人間の価値を見かけだけで判断してはいけない、大事なのは内面なのだ」のはずなのに、実際に物語で起こっているのはことごとく、「※ただしイケメンに限る」というテーマと正反対の事象なのです。それどころか、「見かけが良くないといけないのは大前提。それに加えて、中身も良くないとダメ」という夢も希望もない物語になっています。
醜い魔女に親切にしなかったために呪いをかけられ、野獣に姿を変えられてしまった王子は、結局、ベルという美女に恋をします。
これでベルが十人並み以下の醜女だったら、話はわかるんですが、これでは王子が本当に反省していたのかどうかわかりません。
ベルが王子を野獣の姿のまま愛したのはいいでしょう。
しかし、どうして最後に野獣を王子の姿に戻してしまうのでしょう。
これでは、物語そのものが「野獣みたいな醜い姿の男と結婚させたら、ベルがかわいそうだよね、やっぱりイケメンの王子様じゃなくっちゃね!」と暗に語っているようなものではないでしょうか。
しかし、こんな欺瞞に満ちた物語であっても、客を感動させ、「良いものを見た」と思わせてこそ、エンタメ映画ってものです。
最初に見たのは今、絶賛上映中で、大人気のこちら。
字幕版で見ました。
内容はほぼディズニーアニメ版準拠。
大正義エマ・ワトソンでした。
この人が出ているから、見てみようと思い、見たから、とりあえず満足、と思わせられるなんて、すごい才能です。
テレビ放送していたので録画して視聴。
てっきりディズニーアニメだと思って録画しておいたのですが、見てみると実写でびっくり。フランス映画と知って二度びっくり。
いかにも地雷臭がする作品だったのですが、見てみると意外になかなか。
さすが「美女と野獣」の本家だけあって、主人公のベルは、エマ・ワトソンよりこちらの方がイメージにあっているかも。
まさにフランス人形のような綺麗な人で、衣装や調度品などのセンスが良いのもいかにもフランス映画といった感じで、結構楽しめました。
なぜか巨人が出てきたり、時々出てくるCGがディズニー版よりチープで失笑ものですが、頑張っている感はありました。
美女と野獣の距離の縮まり方が少し不自然に感じましたが、テレビ放送なので、もしかすると大事な場面がカットされていたのかもしれません。
ストーリー上あまり出てくる意味が感じられないベルの兄弟姉妹がたくさんいるのですが、これ、原作準拠みたいですね。
たぶんいろいろディズニー版より原作に近いんだと思います。
それが良い悪いは別にして。
というわけで、映画自体も、悪くなかったです。
ディズニーのようなミュージカル要素はないので、個人的にそこは良かったです。
せっかくなので、10年以上前に、VHSで借りて、あまりのつまらなさに途中で見るのをやめてしまったディズニーアニメももう一度借りて見てみました。
今回はストーリーがちゃんと頭に入っているので、最後まで見ることができました。
基本、実写版と同じなのですが、ベルの父親の設定が違ったり、実写版だと野獣は王子の頃の教養がまだ残っていたのに、アニメ版は文字を読むのもギリギリという馬鹿、という風に違っていたりと、同じ部分、違う部分を見比べるのも面白かったです。
ディズニー版の両方に共通するのですが、物語のしょうもなさをうやむやにする、音楽の素晴らしさ。
これがこの作品の名作たる所以ですね。
ところどころ、ミュージカル的な部分がストーリーのテンポを削いでしまった場面もないではなかったのですが、曲自体は良いものが多かったです。
というわけで、主だった「美女と野獣」を3作まとめて見たので、改めて、「やっぱりこの話、嫌いだわ」と確信したしだいです。