もう去年の話になってしまうのですが、久しぶりにミステリの新作を読みました。
ミステリに限らず、フィクションの新作小説を読むこと自体、結構久しぶりです。
田中啓文「信長島の惨劇」を読んだ。四人の戦国武将が孤島で童歌に沿って殺されていく、とかいうふざけたミステリ。
本能寺の変で織田信長が明智光秀に討たれてから二週間後。死んだはずの信長を名乗る何者かの招待により、羽柴秀吉、柴田勝家、高山右近、そして徳川家康という四人の武将は、三河湾に浮かぶ小島を訪れる。それぞれ信長の死に負い目を感じていた四人は、謎めいた童歌に沿って、一人また一人と殺されていく――。アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』にオマージュを捧げた本格時代ミステリの傑作。
あらすじ読んだだけで、もうお腹いっぱいですね。
こういうインパクトの強い題名のミステリは、得てして、読んでみると、ただふざけているだけで、中身がグダグダ、結局、「設定が一番面白かった、というより面白いのは設定だけ」という感想になりやすいです。
私も過去に、それで何度がっかりしたことか。
ちなみに田中啓文の作品は昔「銀河帝国の弘法も筆の誤り」を読んだことがあります。本当に私は、くだらない題名の小説に弱いですね。
読み始めからしばらく、事件もおこらず、平凡な歴史小説のような記述が延々と続くので、肩透かしをくらうのですが、メンバーが続々と孤島に集まって以降は、普通の孤島ミステリっぽくなり、面白くなってきます。
設定が設定ですので、ガチガチに本格的なミステリを期待する人もあまりいないとは思うのですが、意外とミステリになっていて、最後もきれいに着地しましたので、読んでよかったな、というぐらいの満足感はありました。
逆に言うと、設定の突飛さと比べると、小さくまとまってしまったな、という不満もなきにしもあらずでしたが、それは贅沢というものでしょう。
最後まで読んだら、歴史をネタにする必然性、みたいなのもちゃんとあったので、ある意味歴史ミステリと言っても良いかもしれません(読んでいる間はそんなこと、思いもしませんでしたが)。
ステイホームに合わせて、あんまり重たくない、軽いミステリを読んでみたい、みたいな気分の方には、オススメです。