去年の年末から,わりと頻繁に,映画館で話題作を中心に映画を観ている。
どれもこれもおもしろく,スター・ウォーズ以外,だいたい当たりだったので,いろいろ感想を書いてみたいという思いもないではない。
しかし,話題作過ぎてネットに感想や考察が溢れかえっているのを見てしまうと,それとたいして違う感想をもったわけでもない自分がわざわざ書いたりするのもなー,となってしまうので,それらはもう少し時間をおいて,気が向いたら書くかもしれない。
で,今日は,そこまではメジャーでもなさそうな「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」を見たので,それについて。
正統派本格ミステリ映画です。
以上。
アガサ・クリスティの原作で舞台を現代に移した,っていわれたら,そのまま信じてしまいそうになるぐらい,ベッタベタにクラシックな話。
人里離れた洋館で起こる事件。
警察に協力する名探偵(しかも警察は名探偵に頼る頼る)。
莫大な遺産を残して自殺する富豪の老人。
遺言状の内容を聞かされて取り乱す一族(遺言状,最高!)
容疑者は金持ち一族と使用人。
よくこんなシチュエーションで2020年に,クリスティ原作でもないオリジナルを作ろうと思ったな,最高か。
もうね,ベタすぎて,なまじっか過去にいろいろミステリを見ていると,余計に真相がわからなくなってくるんよ。
ちなみに,主人公の看護師の女の子は嘘をつくと嘔吐してしまうという,ご都合主義的奇病の持ち主。
ってことは,これ,作り手側は,明らかに観客にフェアにミステリ勝負を挑んできているってことなんだよね。
主人公が嘘をついているかどうかっていう情報は,作り手の都合次第でうまく隠すことができる要素なのに,わざわざこの映画では,その手を使いませんよって宣言しているわけだから。
(以下,できるだけネタバレしないように内容に触れる)
自殺したおじいちゃん,推理小説作家っていう設定だから,全部このおじいちゃんが仕組んだ茶番の可能性…ありそう!
シリーズものでない作品の名探偵は,そもそも本当に名探偵かどうかを疑うのはこの手の作品の鉄則!
雰囲気だけの無能かもしれないし,実はすべてを仕組んだ犯人って言うのもよくある!でも本当に名探偵だった場合も考えておかないといけないし…。
いかにも怪しそうな一家の鼻つまみ者のゴロツキ。こいつ怪しすぎ!だから逆に犯人じゃない!?と見せかけて犯人っていうパターンか!?
おおっと!?まだ始まってそれほどたっていないのに,もう真相を明かしちゃう?あっそうか,結局,映像化しやすい犯人視点からの倒叙ものにシフトするわけね。うんうん,それでもいいよ。
みたいなところまでで半分ぐらいかな。
もちろん,このままで素直に終わるわけもなく,予期せぬアクシデントや謎の脅迫者も現れつつ,飽きさせず,最後に見事な着地を決めてくれて,大満足。
映像化が難しい本格ミステリを高いレベルでしっかり仕上げ,その上,今流行りのアメリカの格差問題や移民問題をまぶして,社会派っぽく肉付けして,ただの娯楽じゃありませんよという目配りまで欠かさない職人技。
恐れ入りました。
牛丼を食べたくなったから,牛丼屋に行ったら,ちゃんと美味しい牛丼が出てきて満足といったらいいのかな。そういう映画なんで,牛丼を食べたい人は迷わずGo!