「いつか読まねば」の私的ウェイティングリストに長年のっていた、芦辺拓「紅楼夢の殺人」を最近、ようやく読み終えました。
芦辺拓を読んだのは実は初めてです。
各種ミステリランキングにも名を連ねていて、
週刊文春ミステリーベスト10 2004年 10位
このミステリーがすごい! 2005年 10位
本格ミステリ・ベスト10 2005年 4位
となかなかの高評価。
文庫版解説は、中国文学者の井波律子。
これはうれしい。
中国の五大小説〈下〉水滸伝・金瓶梅・紅楼夢 (岩波新書 新赤版 1128)
- 作者: 井波律子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: 新書
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「紅楼夢」は、清代の小説で、中国の4大名著の一つとして、「三国志演義」「西遊記」「水滸伝」と並び称され(日本では「紅楼夢」ではなくて、他三作と同じ明代に書かれた「金瓶梅」を入れた「4大奇書」の方がメジャーですね)、中国語で「紅迷」(紅楼夢マニア)なんて言葉もあるぐらい人気があって、学術的評価も高い、中国文学を代表する有名な作品です。
紅楼夢(こうろうむ、繁体字: 紅樓夢; 簡体字: 红楼梦; ピン音: Hóng Lóu Mèng; ウェード式: Hong2 Lou2 Meng4)は、清朝中期乾隆帝の時代(18世紀中頃)に書かれた中国長篇白話小説。全120回から成り、前80回が曹雪芹(そう・せつきん)の作、後40回は高鶚(こう・がく)の続作といわれている。『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』とともに旧中国の傑作古典小説に数えられ、『中国四大名著』とも言われる。石頭記(せきとうき・いしき)ともいう。
なぜか日本ではいまいち知名度が低く、全話漫画化した作品もありませんし、翻訳を除けば、小説もおそらく本作ぐらいしかありません。
「三国志演義」や「水滸伝」、「西遊記」は言うに及ばず、「金瓶梅」ですら、山田風太郎の「妖異金瓶梅」など、少ないながらも、様々な日本の作家が、独自の解釈で漫画や小説を発表しているのと比べると、かなりお寒い状況です。
(参考)
まあ、わからないでもないんですよ。
「紅楼夢」、実は私も翻訳は途中まで読んで挫折しました。
うんざりするぐらい長いし、ぶっちゃけ、そこまで面白くない(笑)
いや、それは言い過ぎで、魅力的なキャラクターは多いし、ストーリーも今の中国社会にも通じる普遍的なものだしで、ちゃんと面白さはあるんです。
あるんですけれど、基本的に、日常系のお話なので、日々の出来事が淡々と描かれていて、ストーリーがあまりドラマティックじゃない。
それから、「金瓶梅」もそういうところがあるのですが、すごく中国的な小説ですので、登場人物同士の血縁関係や主従関係が重要で、その関係が複雑な上に人数が多すぎて、把握するのが大変。
その上、ちょうど「源氏物語」が日本人でも平安時代の風俗習慣を知らないとなかなか十全に魅力を感じ難いのと同じように、当時の中国人の価値観や風俗習慣(科挙制度や年中行事、士大夫階級と庶民の感覚の違いなど)を理解した上で読まないと、なかなか彼らの行動原理や、この小説の構造のおもしろさに気づきにくいんですよね。
日本でなかなか「紅楼夢」がメジャーになれないのも、それに影響を受けた創作作品が出てこないのも、そこらへんが原因かなと思います。
ですので、もし「紅楼夢」を日本でやるなら、無理に原作ストーリーを忠実に再現するドラマ的アプローチよりも、キャラクターを全面に押し出して、日常系4コマ漫画風にしたりする方が、とっつきやすくていいかもしれません。
そんな「紅楼夢」不毛の地日本で、紅楼夢の世界を舞台にしたミステリに挑戦した作品があるとなれば、中国文学好き、かつミステリファンとして読まないわけにはいかないではありませんか。
というわけでここからようやく、芦辺拓「紅楼夢の殺人」の感想なのですが、
長くなったので、今日はここまで。
続きます。